1). 完遂率を分けるのは、問題発生の有無ではなく回復の速さ
【Policy】考え方・ポリシー

プロジェクトにおいて問題発生は例外ではなく前提です。物事を完遂できる組織とできない組織の差は、問題から回復する速さと質にあります。
- 計画どおりに最後まで進む案件は少数派。変更・トラブル・環境変化はあたり前に発生する
- 回復する力 ― 不利な状況を克服し、安定的にパフォーマンスを維持するレジリエンス。当社は2019年に「常勝体質をつくる7つの力」の一つとして体系化している。PMBOK第7版(2021年)においても「適応力とレジリエンス」が原則として掲載されている
- 回復する力は才能ではなく、手順として設計・訓練できる能力
2). 軌道修正の5ステップ
【Method】手法・理論

問題発生時の軌道修正は、次の5ステップで進めます。 順序の入れ替え——特に事実確定より先に対策を打つこと——が、二次被害の主因です。
| ステップ | 要点 | 落とし穴 |
|---|---|---|
| ①事実の確定 | 一次情報で「何が起きているか」をありのまま把握 | 加工された報告のみで判断する |
| ②影響の計測 | 納期・品質・コスト・関係者への波及を定量把握 | 影響を楽観側に丸める |
| ③選択肢の設計 | 続行・縮小・停止を含む複数案を用意 | 続行一択で検討を終える |
| ④判断の接続 | 自身の権限を超える判断は、ためらわず上位へ報告 | 現場で抱え込み、報告が遅れる |
| ⑤再計画と合意 | 完了基準を再設定し、関係者と再合意 | 旧計画のまま「頑張り」で吸収する |
5ステップの所要時間を縮めることが、回復力向上の実体である
3). 初動の質は「事実の把握」で決まる
【Policy】考え方・ポリシー

軌道修正の成否は、最初に掴む情報の質で決まります。問題発生時の情報は組織の階層を上がるほど加工され、実態より軽く伝わる性質があるためです。
- 伝達の軽減バイアス ― 悪い知らせは、報告を経るたびに表現が丸められる。終盤の「突然の炎上」は、突然ではなく伝達の減衰にあることが多い
- 現地現物 ― 報告書ではなく、現場・現物・一次データで事実を直接確認する
- 心理的安全性 ― 悪い知らせを早く言い出せる場の形成が、初動速度の上限を決める
4). 回復を早める平時の備え
【Method】手法・理論

回復の速さは、問題発生後の努力ではなく平時の準備で決まります。備えは次の4点で構成されます。
- ①代替案の事前設計 ― 主要リスクに対するプランBを計画時に用意し、問題発生後にゼロから考え始めない
- ②エスカレーション基準の事前合意 ― 「何が起きたら・誰に・いつまでに」接続するかを、平時に決めて共有する
- ③縮小・中止基準の設定 ― 続ける価値を失った際の判断基準を事前に持つ(PM-9-a④と共通)
- ④回復の振り返り ― 問題対応のたびに教訓を記録し、再利用可能な形式知に変換する
5). 回復の経験は、組織の資産になる
【Policy】考え方・ポリシー

問題対応の経験は、個人の武勇伝で終わらせず、組織の再現可能な型へ昇華できます。回復する力が最も伸びるのは、実際の問題を教材化したときです。
- 経験の昇華 ― 問題と回復の記録を教訓集として整備し、次の計画立案の入力にする
- 属人化の防止 ― あの「人」がいたから助かった ではなく、この「型」があるから回復できる へと変える
- 以降の展開 ― 判断を上位へ接続する仕組みの実務は「エスカレーション」で扱う

